タブラトゥーラと波多野睦美(2)2008/09/08 11:14

「タブラトゥーラな一日」
田崎瑞博(タブラトゥーラ/フィドル)

アンコールまでの演奏をすべて終えたら、お客さんとごあいさつ。半端な数ではない楽器達を片付けると、やっと打ち上げだ。打ち上げの多くは、その公演を支えてくださった方達との楽しい交流の場である。人数が多い場合は、私たちメンバーはなるべくばらばらに席に着くようにするのが習わしになっている。その方が、なるべく多くの人と接することができるからだ。しかしそれにはまた、別の理由もある。リハーサル、公演、旅行と続いたメンバー同士の会話よりも、新たな友人ができるほうが数段楽しいからだ。タブラトゥーラはもう結成24年。性格のすみずみまで知り抜いた面々とのやりとりは、たとえお酒という緩衝材を用いたとしても、もうあきあきしているのだ。さらに言えば、新たな友人に対して、自分の悪癖などを脇から言いふらされたりでもしたら大変だ。

この手のメンバーばらばら感は翌朝にも続いていて、ホテルの朝食で顔を合わせても同じテーブルには着かない場合が多いし、ましてや市内観光に誘ったりなどは絶対にない。確実に全員の顔が揃うのは、昼過ぎの、会場リハーサル開始時刻である。そこではさすがに多少の会話があって、昨晩は何時に寝たかとか、さっきの昼ご飯はどこで食べたかくらいの愛想は言い合うことになっている。その際に、この半日の間で起こった自分の不手際(忘れ物をした・ずっこけた・ちょっと言えないことがあった)については、積極的に報告しなければならないことになっている。あるいは、他のメンバーがその失敗を目撃していることもあり、本人が黙秘していたとしても、その場合は微に入り細に入り語られる。他のメンバーの失敗談ほど楽しいものはなく、当の本人はともかく、あとの4人のテンションは一気に上がることとなる。つまり、一瞬にしてチームはひとつになり、それは、そのあとの演奏のノリのよさにまで影響することが、ままある。

さて、そんなこんなでリハーサルが盛り上がると、そのまま本番へと突入。お客さんと対面し、団長のあいさつから始まっての演奏は、まさに楽しさの連続だ。この時ばかりは、たとえ自分がなにか落ち込むような失敗があったとしても、すっかりそれを忘れて音楽に浸ることができる。特にお客さんの喝采はなによりのご褒美だ。

そして公演が終われば気分よく打ち上げとなる。しかしそこでの話題は、昨晩の自分の失敗談で花が咲くこともあるから要注意だ。他のメンバーは、この時とばかり攻撃の手をまったく休めようとせず、かなりの誇張をもって容赦なく仲間を叩きのめすのだ。

このようにタブラトゥーラは、私を有頂天にさせたり、大窮地に陥らせたりする。どっちの割合が多くなるかは、なんのことはない、自分の心がけ次第なのだ。

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