イリーナ・メジューエワ(2)2008/09/15 10:39

<味噌汁マスター>

イリーナさんは小柄で色白、お会いすると非常に控えめで楚々としいています。しかし演奏を聴くと、予想外に骨太!特別な体力づくりや食生活をされているのでしょうか?

イ:体力づくりですか・・・特別なことは何もやっていないですね。ただ、歩くことが好きなので、しょっちゅう散歩をしています。4~5キロ歩くのは苦になりません。時には10キロくらい離れた場所に行くのに歩くこともあります。散歩の途中で未知の風景やお店を発見するのを楽しんだりしています。

本番直前は何も口にされませんが、普段の食生活に何か秘密がありますか?

イ:ごく普通の食生活だと思います。毎日普通に料理していますし。家では大体和食を食べることが多いですね。ロシア料理は滅多に作りません。やはり風土・気候と食事は密接に関わっているのでしょうか、日本で暮らしているとロシア料理を食べたいと思うことが少ないのです。和食がいちばん自然で美味しく感じられます。お蕎麦、うどん、豆腐、味噌汁、うなぎ、すき焼き、しゃぶしゃぶ、鍋料理など、大好きですよ。魚の刺身も最初は苦手でしたが、だんだん好きになりました。苦手なのは納豆ぐらい。
和食の素晴らしいところは、ヘルシーで美味しいのはもちろんですが、料理を盛りつける器に至るまで様々に楽しめる点にあると思います。色彩も豊かですし、陶器や漆器などの手触りも楽しめますよね。食事というごく日常的なものごとの中にも芸術的な要素が自然な形で入っているのは、日本ならではの素晴らしさだと思います。あと、日本は地方ごとに食事もさまざまで、それぞれに名物料理があるというのは面白いですね。仕事がら色んな地方に行きますが、その土地のいちばん美味しいものを味わうというのはとても楽しい体験です。

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和食がお好きとのイリーナさん、味噌汁作りが大得意と聞きました。そう言えば、先日仕事で喜多方へご一緒した時に、おいしいお味噌のお店をご存知で、しっかりお好みのお味噌をゲットしていました。仙台味噌も赤味噌でおいしいお味噌汁が作れそうですね。

明日はイリーナさんの趣味を聞いてみたいと思います。

マネージャー
いたはしみづき
http://www.concert.co.jp/artist/mejoueva/profile.html

谷川賢作の股旅日記2008(2)2008/09/15 18:28

9月14日(日)今日は私のホームグラウンド渋谷「公園通りクラシックス」でソロライブの日。今年は隔月(奇数月)で必ずここでソロのライブをやることにしている。クラシックのピアニストにとっては当たり前の「ソロ」だが、我々ジャズ系のプレイヤーはなかなかソロのライブ、コンサートを作らない。なぜかと言われても、他のプレイヤーとのインプロビゼーション(アドリブ)のかけあいのほうがおもしろいから、と言うしかないのだが、でもソロは自分との対話、挑戦として必ずコンスタントに続けていくつもりだ。

プログラムはオリジナル曲ばかり。先日、舘野泉さん、平原あゆみさん、私の「3手」のために書いた「小春日和」からスタート。もちろん今日はソロなので中間部はアドリブしまくりだが、まったくアドリブのない5曲からなる組曲にして、来年3人で初演の予定「スケッチズ・オブ・オールド・ジャパニーズ・ランドスケープス」(仮) お楽しみに。2曲目はやはり舘野さんに捧げた「A Chorale for Carla」もちろんアレンジを変えて両手ヴァージョンで弾くのだが、この曲は左手1本のほうがストイックでいいと思った。やはりその時に吟味して書かれた少ない音のほうが研ぎ澄まされているのか。いつでも、アドリブにはしろうとする態度を反省。3曲めは「風来坊の春」というワルツ。お客様でいらしてくださった、出版関係のOさんから「私が今抱いている企画にぴったりの曲」と言われてなんだか嬉しくなる。その企画を終演後熱意をこめて語られる。ふむふむ。これも形になる日をお楽しみに!

さて、こうやって1曲ずつレポートしていると長くなるので、ここで突然話題を変えて、敬愛する「My 調律師」宮崎剛史君のことを書く。彼と私は同じ歳。48歳。20代前半の時、さいたまの某ジャズ倶楽部で出会って以来、つかずはなれず、の関係と言いたいところだが、一度はなれてしまっている。これは一方的に私が悪くて「調律なんざあ まあ、あるにこしたこたあねえが、おいらピアノ弾き一匹、そこにピアノがあればどんなもんでも状態でも見事に弾いてみせるぜ」というまったくもって驕りたかぶった、これぞ若気の至り、という愚かな心構えだったので、自然と彼は私から遠ざかってしまったのである。彼の整音のすばらしさ、私との相性の良さに気づくのはごく最近まで待たなければならなかったのである。ああ遅い。再び反省。もうはなさないぜい!だんな~

しかし、ピアニストと調律師の関係というのも不思議なもんだ。初めての場所で、初めての調律師の方に「先生、先生」と言われながら、その日の楽器に四苦八苦している自分はいったい誰なのだろう??気が遠
くなりそうだ。そしてすべての演奏の場に、宮崎君を従えて「肩で風をきって颯爽と現れる」のはいったいいつの日だろう?(そんな日はこないよ あほ)まあとのもかく、少しずつ前進あるのみ。

来年2月ピアノソロの新しいアルバムを録音する。もちろん調律は彼。妥協のない、魂のこもった音でせめぎあいたい。どうだこの音、まいったか、とぎゃふんと言わせてやりたい。おそらく彼もすばらしいチューニングで、私にまいったを言わせたいに違いない。同世代っていいなあ。ライバルで友達。


写真 右後方が宮崎剛史君。いい仕事するのに、目立ちたがらない、、、