タブラトゥーラと波多野睦美(3)2008/09/09 08:20

「タブラトゥーラ海外ツアーの思い出(エジプト編)」
近藤郁夫(タブラトゥーラ/パーカッション)

今までにカナダを始めエジプト・イタリア・スロベニア・オーストリア・インド・バングラデシュ・パキスタン・韓国とさまざまな国でコンサートをすることができました。ケベックの美しい町並みやローマの遺跡、フィレンツェの教会、スロベニアの湖上の教会、バングラデシュの市場等々、いくら書いてもきりがないぐらい思い出はたくさんありますが、一番印象に残っているエジプトについて書くことにします。


エジプトへは直行便がないのでフランクフルトを経由して向かわなければならない。季節が冬だったので、朝8時に朝食をしようと起きたら外は真っ暗! 車のライトを点灯して通勤する光景が印象的でした。
そんなこんなの後(かなり間を省略)飛行機でカイロへ向かう機内でも少々驚かされた。パーサーのお兄さんがサービスでワインを持ってきてくれて、何度かくるうちに、座席のアームレストに半座りになり、ワインをついでくれた。それも初めて見る光景だったが、その後自分でグラスにワインをついで飲んでいるではないか! おまえも飲むのか??? まっ!ところ変われば何とやらということで、これもありかと半ば強引に納得。しかしその後コクピットのドアを開けて中を指さす。ん?とのぞき込むと「クールでしょう」と微笑みかけられてしまった。私もにっこり微笑んでしまった。ちょっとまて〜!普通開けるか! ハイジャック対策は! テロ対策は!?

そんなこんなでまもなくカイロに到着。窓から外を眺めると、一面煉瓦色の景色が広がっていて妙に高揚したのを思い出す。到着後、高速を通ってホテルに向かう途中、ここでも認識を覆されることになる。ん?今人がいたような・・・? 高速道路のはずだよな? 市内に近づくにつれ疑問は確信となった。やっぱり人が歩いている。それも高速道路を横断しているではないか。赤ちゃんを抱えた母親(事実)が・・・、松葉杖の老人(事実)が・・・、しかし車は減速することなく突っ走る(高速道路だから)。さらに市街に入り驚愕させられることになる。3車線の道路に6列の車列ができており、交差点内は何が何だか解らない状態になっている。我々の乗った車も例外ではなく赤信号に平然とつっこんでいく。 当然歩行者もたくさんいる 。すっすごい!すごすぎる!!!またほとんどの車のサイドミラーがないので、ガイドの方に尋ねてみると、最初はついているのだがすぐ無くなってしまうらしい。そりゃそうだよな、なんせ車幅間隔が5〜10cmぐらいでばんばん走っているのだから、ミラーなんかすぐ飛ばされてしまうのも当然といえば当然。僕は車の運転が好きなので大抵の移動先では運転してみたくなるが、この国だけはちょっと無理そうだ(完全にビビリモード)。このような環境を楽しみつつホテル到着。

当然ながらピラミッドを見に行く。街中を車で走ることしばし、突然街が切れると同時にサハラ砂漠が広がりピラミッドがそびえ立つ。僕らが普段目にするピラミッドの映像は広い砂漠の中にそびえ立つ印象があるが、意外なことにぎりぎりまで街が押し寄せている。これは結構驚いた。車を降りてピラミッドに向かう途中にたくさんの土産を売る人たちに遭遇する。みんな日本語らしき言葉で「ジェンブデシェンエン」(全部で千円)と叫びながら近づいてくる。その勢いに負けそうになりながらも、ピラミッド内部に入る事ができた。映像や雑誌で見たことはあるのだが、実際中に入ってみるとそのミステリアスな空間に圧倒されてしまった。

さていよいよコンサートに関しての話です。会場はハンハリーリにあるスルタン(昔の権力者)の建物で行ったのだが異常な盛り上がりをみせた。競演することになっていた地元の音楽大学で打楽器を教えているヤーセル氏にパーカッションソロでのリズムについてアドバイスをもらい、本番で演奏してみたところ、会場が一気にわぁー!と手拍子と歓声の嵐になってしまった。いったい何が起こったんだろう、こんな体験は今までに経験したことがない。演奏している本人が鳥肌が立つほど一番驚いてしまった。太鼓たたきで良かったと実感できた一時でした。また聴きに来てくれた人たちもおおらかで、ちょっとダンサブルな曲になると踊り出すおじいちゃんや静かな曲にもかかわらずスタスタとステージを横切ってトイレにいってしまうお客様。まじですか〜〜〜! 僕のコンサートに対する認識はガラガラと音を立てて崩れていくのでありました。てな感じで楽しくコンサートを終了することができました。とにもかくにもカイロはエネルギッシュでエキサイティングな街でした。