<せんくら2008を終えて プロデューサーより>2008/10/16 14:06

実感として、せんくらは2年目から3年目で随分変わったような気がします。1年目から2年目の変化より大きいのではないでしょうか。

まずお客様の全体的な雰囲気が変わりました。1コマ45分という時間枠への慣れとか、仙台以外のリピーターの方が地下鉄移動の感覚も摑んでいただいたようで、ホールから地下鉄駅までのお客様の表情が不安の少ないゆったりとしたものになっていました。そのあたりで私に気がついて声をかけてくださった方が5人や10人ではないのも、これまでの2回とは全く異なったことでした。

それからボランティアの方の表情も全く変わっていましたね。仙台のボランティア軍団はもともと定評のあるもので、出演者からの評価も高いものでしたが、これまでの整然としていて、かつ感じが良い、というのから脱皮して、リラックスした柔らかい雰囲気を作り出していました。これはちょっと意外なくらいです。全体の雰囲気が明るくなったのにこれがどれほど寄与しているか。

内容的に、はっきり意識して今回やったことは作曲家の参加を増やしたことです。これは色々な側面があります。

まず山下洋輔さん、松下功さん、レオ・ブローウェルといった作曲家の現代作品だけの枠を作りましたし、高橋悠治さんも自作がメインの枠があります。クラシックファンから見たら難しそうな現代音楽も、クラシックマニアでない方から見れば同じようなものです。結果としてこれらの枠はすべて売り切れた上に、客席の反応も強いものがありました。東京でもこれらを売り切るのは難しいことですが、せんくらのお客様はすっと受け入れてくださったわけです。

作曲家たちには編曲でも活躍していただきました。予算や規定や色々なことで仙台フィルの参加枠は限られます。でもそれだけだと、ちょっと寂しい話になる。それで小編成オーケストラのアンサンブル東風をお招きして、オーケストラ曲もやっていただいたのです。菅さん中鉢さんのオペラアリアの枠、津田さんと荒川さん達とのモーツァルトの協奏曲の枠など、すべて小編成向けの編曲=アレンジが行われています。東風の松下功さん森田佳代子さんが名曲をこの編成にアレンジしてくださったおかげで、これらの枠が成立しました。

そして演奏者もなるべく作曲家でもあるようなタイプを多くお願いしました。いわゆるコンポーザーパフォーマーで、加藤昌則さん寺嶋陸也さん高橋悠治さん松下功さんなどこのタイプです。フルートの荒川洋さんも作曲をなさいます。こういった演奏経験、舞台経験のある作曲家による観念的な難しい現代音楽ではない、新鮮で現代の感覚にもマッチする作品や編曲が行われれば、せんくらの趣旨をずらすことなく、広げることができると考えました。

こういったことを、せんくらではお客様の支持、具体的には入場者数や席の埋まるパーセンテージを落とさないでやりたいと思ったわけです。それが定着してくれば、クラシックの新しい客層の開拓にもなるし、とりあえずポピュラーなよくご存じの小品を聴いた次の段階の受け皿にもなるでしょう。

こういったことが色々とあるわけですが、せんくらの最も大事な点は何でしょうか?

私はやはりそれは「入場料1000円でハイクオリティ」ということだと思っています。今時1500円でも2000円でも安いとは思いますが、やはりあちこちのぞく、特に興味の無い、あるいは知らないモノもちょっとのぞいて欲しい、となるとこれは譲りたくないところです。1000円なら「やっぱりつまらなかった」でもあきらめもつくでしょう。もちろん私としては絶対の自信のあるものだけ並べていますが、人の好き好きも様々ですから。

その1000円を守るために、仙台市側の補助も民間スポンサーもお願いする。私の意識としてははっきりこういう順番なわけです。

社会的にも雇用、環境、エネルギーなど長期的な不安要素は多々あり、個々の方の生活実感としても将来不安なく右肩上がりと思っておられる方はほとんどいらっしゃらないでしょう。音楽界で言えば欧米の一流オペラやオーケストラが来ても高いチケットは、はっきり売れなくなってきています。そういった中で1000円というのは時流にもあっているし、「売り」にもなると思うのです。

現在結果的にはお客様の入場料と、民間スポンサー、そして仙台市側の補助金がほぼ3分の1づつです。これは考え方は様々でしょうが私はいいバランスだと思っています。市側からすればもっと入場料が増えればいいでしょう。ですが、そうなればなるほど興業に近づきます。興業エンタテインメントはそれはそれで、もちろん価値の高いものですし、私もそういう仕事もたくさんしていますが、それだけだとやはりこぼれ落ちるものもある。年1回2000円だけ使ってせんくらを2コマ見るのだけが楽しみ、という方も現にいるわけです。そういう方にこそ最高のアートを届けるのが我々のつとめでしょう。

せんくらは元々一昨年の一度だけのイベントとして計画されました。ところが、有り難い話で、のべ3万人くらいの方が来てくださった。それならもう2年、トータル3年くらいはやってみようか、と急に変わったわけです。ということは仙台市市民文化事業団はじめ仙台市側としても継続的な予算措置や人員配置は、やっている暇のないうちに、ともかく開催してきたわけです。現場を任された職員の皆様は本来他の業務があった上にせんくらですから、その負担はかなりのものでした。

一区切りの3年が終わり、今後せんくらを継続するなら、それようの予算確保も組織も必要です。これは簡単なことではありませんから、来年以降せんくらをどうする、ということはまだ発表段階に至っていないわけです。

いずれの形になるにしろ近いうちに発表がなされると思います。

仮にせんくらがここで終わってしまったら、とても残念で「道半ば」の感を否めません。我々としてはよかれと思うことは、できるだけぶち込みましたし、更に発展の余地は大きいと思いますが、結局は仙台市側および背後の皆さんが、「本当はどう希望してるか」というところに落ち着くでしょう。

せんくらは、どこでもできそうですが、実際は仙台でしかできないイベントです。今回の及川さん急病時に、仙台国際音楽コンクールが生んだ地元の津田裕也さんが救ってくださったのは象徴的でした。そういった文化的な蓄積は、せんくらがどうであれ、色々な形で開花していくと思います。

平井洋 せんくら2008プロデューサー

コメント

_ 秋だけロマンチスト ― 2008/10/16 16:45

去年と今年のせんくらの聴衆の一人として、たくさんの貴重な思い出をいただいた者です。また来年も必ず来ようと思った矢先に、継続するために乗り越えなければならない課題があることを知り、なんとか続けられるよう願わずにはいられません。





> 仮にせんくらがここで終わってしまったら、とても残念で「道半ば」の感を否めません。





-->> ほんとうにその通りです。場合によっては民間スポンサーの数をさらに増やすなどして、仙台の文化としての価値を得ているこのフェスティバルを絶やすことなく続けていければ、と切望します。





詳しい事情は全く知るよしもない者ですが、例えば協賛会社の名前が掲げられた公演に対して私は違和感がないばかりでなく、むしろ、そのような形で文化を支える会社に好感を抱きました。

会社の利益に直接反映されなくても、必ず何らかの面で業績にプラスの影響をもたらし、また従業員としても、自分の会社の社会貢献は誇りとなり働き甲斐となります。

来年は我が社もぜひ協賛に加わろう、という動きを各社で起こしていただければ、という期待をもたずにはいられません。





何も事情を知らぬ者が失礼なことを述べさせていただくような気もしますが、

また来年のせんくらも楽しみにしている聴衆や、せんくらに深い思い入れを持って下さるアーティストの皆様、そして今回都合やチケット売り切れなどで聞けなかったが来年こそは、と思っている少なからぬファンにとっても、来年のせんくらが、この路線を保って行われることは、すでに心の中の既成概念と言うか、当然の期待となっていることを、継続の是非に関わるすべての皆様に十分ご理解いただければ、と願ってやみません。

_ 三日猫 ― 2008/10/16 23:07

何の疑いもなく「せんくら」は仙台の秋の風物詩になるものと思っていました。去年せんくらを知りましたが都合で十分楽しめず心残りだったので、今年はHPが立ち上がるなりブックマークしてチケットの発売、そして開催を指折り数えて心待ちにしていました。荒天の予報を心配していましたが実際はよいお天気が続き、3日間楽しく音楽を堪能しました。こんな贅沢をしていいのかと思ったくらいです。来年もまた楽しみ、と帰途につきましたが、まさか来年以降の存続が決まっていないとは・・・暗澹たる思いです。せんくらのように信じられない価格設定のチケットで短期間に、バリエーション豊かな作曲家、演奏家、コンサート形態を楽しめるなんて、どれほど貴重で贅沢なイベントなのかと思います。よそ者としては仙台市民の方が本当にうらやましくてしかたなかったのですが・・・。実際に運営される方々の事情、ご苦労は図るべくもありませんが、仙台の貴重な財産となり得るせんくらの存続を切に切に願います。

_ 一仙台市民。 ― 2008/10/19 19:20

続けてください。
どうか、お願いします。

_ 一東京都民 ― 2008/10/20 22:16

今年で3回め、毎年東京からせんくらに通いました。何といっても出演者の豪華さ、値段の安さが魅力で、毎回わくわく、とても楽しみでした。
東京在住なので、せんくらが参考にしたというラフォールジュルネも何回か行きましたが、あそこは会場が大きすぎ、雰囲気は全く別物でした。
また45分の中に出演者のトークが入るのが興味深い、
たった180席の小さな会場で出演者と一体になっていられる空間はとても贅沢な時間でした。
一昨年はとっぷり音楽会を堪能し、昨年は松島まで足を伸ばし、また今年は塩釜魚市場で買い物をしてきました。来年は山寺にも、なんて考えています。
仙台人の持つ知的さと洗練さとボランティア精神がきっとこのフェスを成功させている一因だと思います。これは仙台の価値ある文化の象徴とも思えます。
是非今の高いレベルのままで続けていってください。
ひとつの物事の裏には必ず賛成派、反対派があるのは当然ですが(当然反対派にもそれなりの理由があるでしょう)仙台の宝ともなるせんくらの、今のポリシーを変えないでの存続を切に願います。

_ ♪樂都の市民♪ ― 2008/10/22 08:57

三日間、堪能させていただきました。
ジャズフェスにはよく行きますが、せんくらは今回が初めてでした。面倒がらずに、一回目から足を運べばよかったと、来年を楽しみにしていたところに、一応三回が目安だったという記事に接し、大変、残念に思っています。
一人の客として楽しかったという気持ちとともに、出演してくださった方たち、企画・運営された方たち、ボランティアの方たち、また遠くから仙台にいらしてくださった方たちに、感謝を申し上げます。不十分な音響の小さなホールで快く演奏してくださった出演者の方たちに、心からお礼を申し上げます。お陰様でとても豊かな時間を楽しむことが出来ました。
平井さん、本当にお疲れ様でした。
東北の人間は、口下手と言われておりますので、共にお祭りを楽しみ、皆様に感謝している仙台の一市民の気持ちが伝わることを願い、書き込んでいます。
思えば、十年以上前に「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」を楽しませていただきました。期間を通して、若い演奏家の奏でる音楽を楽しむだけでなく、若い演奏家とそのスタッフの方たちの音楽に対する姿勢を 期間を通して拝見するという経験ができました。
コンクール出演者に付きそっていらした方たちが、予選が始まったばかりの、がらがらの青年文化センターの小さなホールの二階に陣取って、課題曲にあわせて身体中で音を楽しんでいらっしゃる姿がとても印象的でした。青年文化センターに行くたびに、音楽を楽しんでいらした方たちの姿を、私は今も思い出します。
平井さんがおっしゃるように、こういう時間の重なりの上に「せんくら」の成功と成長はあるのだと思います。
今年もまた、仙台の街に音楽を愛する方たちがおいでになり、たくさんの音と笑顔を残してお帰りになりました。
会場では、関連のCDと書籍を売るブースで、楽しそうに本を選ばれていた方の背中に大事に担がれているバイオリンが目に入り、出演者の方だと微笑んで見送り、会場をあとにするいかにも音楽関係者のかたの満足そうな表情に良い演奏だったのだと再確認し、「宿がとれたから、今夜も聴けるよ」と嬉しそうに話す県外からいらした方の声に一緒に嬉しくなり、何度も心温まる思いを致しました。
音楽だけでなく、それらの体験ができる空間を、全部纏めて「せんくら」と呼ぶのだと思います。この音楽祭では、仙台市の聴衆はゲストでありつつ、同時にホストでもあるのでしょう。
この場があることによって育てられる感性があり、育ちあう感性もあるのではないかと感じています。
そういう場を大切に育んでいくことの出来る樂都・仙台であって欲しいと、市民は ただ願うばかりです。

「おかえりなさい、仙台へ」
来年の秋も、そんな思いで 音の周辺も含めて、音楽を丸ごと楽しむ「せんくら」で皆様と再会できることを、切に願っております。

_ 地元 ― 2008/10/22 21:05

コンサートの合間に旭ヶ丘のテラスでおいしいショパンポトフと米粉パンを食べながら、夢のようなイベントだな、仙台市もやるもんだなと思いました。
これまで「せんくら」をつくってこられた平井プロデューサーの、一区切り3回目を終えたあとのさらなる展開を是非見せていただきたく、期待しております。

_ 一せんくらファン ― 2008/10/22 23:06

10月21日の読売新聞の夕刊の全国版にせんくら載りましたよ!これからのクラシックコンサートのあり方について、ラフォルジュルネやせんくらの姿勢がひとつの方向として紹介されていました。もういよいよせんくらも全国版ですね。
せんくらの知名度が少しづつ上がっていくのがうれしいです。
勿論仙台の元々持っている文化の土壌があるからこそ成功しているんでしょうが、やっぱりここは仙台地元だけにとどまらず、もっともっと目を世界に広げて質の高い音楽祭にしていってください。

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_ LINDEN日記 - 2008/10/16 14:57

今年3年目を迎えたせんくら(仙台クラシック・フェスティバル)に日帰りで行ってきま