茂木大輔(2)2008/09/29 09:00

翌朝早起きし、新幹線で仙台へ。いよいよ「せんくら」で共演する仙台市民交響楽団との練習日。

熱心に、「解説演奏の箇所を早く!」教えて下さい、という催促が来ているのだったが、なにしろ、アマチュアオーケストラで解説演奏会をするのは初めて。そして、そのオケの演奏を全然知らない。

モーツアルトは「歌手の声に合わせて洋服をあつらえるようにアリアを書く」と言ったが、もぎぎはオケに合わせて解説企画を作ろう(らねばならない)と思っているので、この練習でお互いに「お手並み拝見」をしなくては、ハナシが進まない。

アマオケというのは本当に演奏水準が千差万別で、演奏環境も甚だしくピンキリである。極端にいえば、「シベリウスの交響曲をやる、というので練習に行ってみたが、管楽器全員が揃っており、コントラバスが6人いるのに、ヴァイオリン2,ヴィオラ、なし、チェロ:ゼロ、であった」とか、「3ヶ月間、じっくり練習を積み重ね、意思を疎通し、ようやくなかなかよい演奏が出来る、と思っていたら、本番直前の最後の練習だけ弦楽器が2倍の人数になった」(本番だけに雇われるエキストラが入るせいである。この人たちは練習の内容を知らないが、自分たちの務めであるからととても大きな音で弾いてくれる)とか、「練習で20分かけて管楽器のソロにニュアンスを説明し、ようやく形になったら、私本番は吹かないんです、と言われた。」(アマチュアだけに存在する制度である「台拭き」じゃなかった「代吹き:練習だけ代わって吹くこと」)などということがよくある。
弦楽器の半数が楽器を持って3ヶ月、という状態でドボルジャークの交響曲を演奏したこともある。
そうかと思うと、このオケマジでプロでは?というとてつもなくウマイ団体も数多く、やる気のないプロを振っているよりも熱意があって楽しかったりする。
まあ、行ってみるまで、本当にわからないのがアマオケというものなのだ。

で、行ってみた。
やるのは第4楽章から。
ぼくはそもそも最悪の事態を想定してからことにかかるというA型特有のヒットオンストンブリッジビフォーゴーイングな石橋体質であるので、最初に棒を下ろすときには内心、幼稚園合奏級のサウンドを覚悟している。
しかし。
最初の恐ろしいC音の出だしをクリアー、クレッシエンドの迫力、合奏の合い方など、非常に気持ちよい。余裕があって、よく指揮も見ているし、最初の練習で必ず起きる様々な小さなズレの対応もオトナな感じである。(ズレた事に気付かない、ズレたまま行く、とか、ズレを直すためにもっとズレる、などがよくある。あわてず、ちょっとほっておいて、つぎの継ぎ目でさりげなく乗り移る、のがコツ。プラモデルでセメダインがはみだしたとき、乾かしてから紙やすりをかけるほうがキレイなのと同じ。)
ホルンも、トロンボーンも、ティンパニも、音に言葉があって、確かな技術があって、合奏全体から「大人な味わい」が漂っている。なにか注文をしたときの反応の速さ確実さも頼れる。編成も揃っており、よそではいつも気掛かりなチェロやヴィオラはプロより元気かもしれない勢いだ。
全員が譜面台に名前を書いてぶら下げている(弦楽器は名札が2枚)ので、お名前で話しかける事ができるのが幼稚園ごっこみたいでカワイイ。(初めて見た。)
こりゃ、大丈夫。
30秒で大体判断し、あとは全体を軽く練習(といっても、4時間以上かかるわけですが)して、見事なソロを弾いていたコンマス君@京都在住と一緒にタクシーに乗り、駅で息子に牛タンを買って帰京。
解説演奏の具体的なイメージがぐっと近づく。通し演奏はどこをやっても、仙台市民の休日の朝の時間を心地よく過ごしていただけるという確信を持つ。心配は消えてこの仕事が楽しみになった。あとは企画だ。

・・・・・・・・
注)名札の件はせんくら制作スタッフがいらぬ気を利かせて(?)、市民響の事務局スタッフに頼んでご準備いただいたものです。

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