山下洋輔(4) ― 2008/10/08 13:45
その挾間美帆共々仙台にやって来て、仙台フィルとのリハーサルを6日にやりました。指揮の山下一史さんとは、この5月に兵庫県立芸術文化センターで筒井康隆さんの「フリン伝習録」という、歌、朗読、ジャズ、オーケストラが入り乱れる「メリー・ウイドウ」が原作の出し物を一緒にやっています。その中にはこちらが即興的に作る音楽とオケを合わせる場面が何度もありました。両者の橋渡しのやり方を完全に把握しておられるので、安心してお任せできます。すでに「Explorer」についても、山下一史さんとの打ち合わせは済ませてありました。(写真:山下一史さん*photo:K.Miura)
第1楽章のはじまりはクラリネットのソロです。これは「ラプソディ・イン・ブルー」の出だしに一瞬似ていますが、すぐにそれとは全然ちがうクラとピアノの競演が始まります。やがてそこにオケが入ってきて、第1回のカタストロフィに向かいます。この「崩壊」への動きは計3回ありますが、この場面に実はこの曲の基本的なコンセプトが凝縮されています。第3楽章のクライマックスは、時間をさかのぼって「ビッグバン」と遭遇するというものなのですが、その圧縮された構造がここにあることをあらためて発見しました。
作曲者のくせに今さらなんだと言われても仕方がないのですが、アイディアを得た時には全体がまだ見えないという状態もあるのですね。そして全体が出来た上であらためて見直すとそういう構造になっていた。それを無意識のうちに求めていたのでしょうか。
また崩壊に参加するオケの音の中には、第1楽章に出てくるテーマの断片が全てちりばめられています。これは挾間美帆のアイディアと手腕で、全ての音が前兆にも予兆にも回想にも聴こえる、音楽という芸術の不思議さをあらためて描き出してくれたと再認識しました。
今回の仙台フィルとの再演の機会に、この第3番「Explorer」は、私にさまざまな新しい意味と発見をもたらしてくれるようです。
第1楽章のはじまりはクラリネットのソロです。これは「ラプソディ・イン・ブルー」の出だしに一瞬似ていますが、すぐにそれとは全然ちがうクラとピアノの競演が始まります。やがてそこにオケが入ってきて、第1回のカタストロフィに向かいます。この「崩壊」への動きは計3回ありますが、この場面に実はこの曲の基本的なコンセプトが凝縮されています。第3楽章のクライマックスは、時間をさかのぼって「ビッグバン」と遭遇するというものなのですが、その圧縮された構造がここにあることをあらためて発見しました。
作曲者のくせに今さらなんだと言われても仕方がないのですが、アイディアを得た時には全体がまだ見えないという状態もあるのですね。そして全体が出来た上であらためて見直すとそういう構造になっていた。それを無意識のうちに求めていたのでしょうか。
また崩壊に参加するオケの音の中には、第1楽章に出てくるテーマの断片が全てちりばめられています。これは挾間美帆のアイディアと手腕で、全ての音が前兆にも予兆にも回想にも聴こえる、音楽という芸術の不思議さをあらためて描き出してくれたと再認識しました。
今回の仙台フィルとの再演の機会に、この第3番「Explorer」は、私にさまざまな新しい意味と発見をもたらしてくれるようです。
<安永さん代演の理恵子さんのこと・・・・プロデューサーより> ― 2008/10/08 14:59
さて、その安永さんの代演で、今回2番枠
10/11(土) 12:45-13:30
仙台市青年文化センターコンサートホール
にご登場いただけるのが、ヴァイオリンの鈴木理恵子さん。せんくらには初めてのお目見えです。
桐朋学園時代から嘱望された存在で、卒業後すぐに23歳でまずは新日本フィルハーモニーの副コンサートマスターとして招かれ、その後、スウェーデンのマルメ歌劇場(北欧の名門です)のオーケストラや読売日本交響楽団にもゲストコンサートマスターとして招かれています。
ソリストとしては、チェコフィルをバックに「四季」のCDを入れたり、リサイタルでもお相手のピアニストは藤井一興さんとか高橋悠治さんとか野平一郎さんといったそうそうたる作曲家兼ピアニスト達が並んでいます。
このようにクラシックの略歴だけとっても、これでもか、という位なのですが、理恵子さんの場合、更に加古隆さんや久石譲さん(「となりのトトロ」や「崖の上のポニョ」の作曲者)といったジャンルを超えた独特な活動をなさっている方々からの信頼も厚く、彼らの主なコンサートにはよく招かれています。確か理恵子さんの最新CDは久石さんのプロデュースだと思います。
更に更に、クラシック系の演奏家としては珍しくアジアとの交流にも熱心で、アジア各地に出かけていってコンサートを開いたり、横浜の美術館ではアジア系の音楽祭の音楽監督をやったりしています。
そんな理恵子さんですから、せんくらにも「いつか是非」と思っていましたが、今回こういうことで急遽実現しました。本当は他にスケジュールもおありだったようですが、「はい、そういうことなら喜んで」とあっさりお引き受けくださいました。
その彼女が今回の仙台にいるメンバーを見渡して相棒として指名したのが、なんとギターの福田進一さん。
ギターとヴァイオリンの組み合わせはよくあるので、そのこと自体は驚くに値しませんが、今回の福田進一さんは15分前まで他のホールでソロリサイタルを弾いているのです。普通はこれは考えられません。何と言っても開場してお客様が入ってこられるときに福田さんはまだアルベニスか何かを他の本番で弾いている最中なのですから。
それで、「それは無理です」と申し上げたのですが、理恵子様のお答えは実に簡単で「福田さんなら大丈夫です」。
それで、ともかく電話を切り、福田さんのマネジャー氏におかけしました。
福田さんと言えば、第1回のせんくらの時は前日海外から成田空港に帰国してそのまま仙台入りのはずが、台風のため飛行機は成田に着陸できず、深夜関西国際空港に着陸してしまいました。もう東海道新幹線も無い時間です。更に寝台特急は満席。
それで福田さんはマネジャー氏に「せんくらは飛ぶね」と電話したところ、「そんなことをしたら飛ぶのはせんくらではなく、僕のクビです」というせんくらの歴史に残る名文句で福田さんはやむなく席もない寝台特急に飛び乗り、そこから更に満席の新幹線を乗り継いで本番15分前にホールに現れた、ということがありました。
これは、あまりに面白い話なのであちこちで書いたりしゃべったりしているので、もうご覧いただいた方もいらっしゃるかもしれません。
ともかく、そのマネジャー氏に電話をして、「15分前までソロ弾いてるんだから、福田さん駄目ですよねー」と言ったところ、「いや、理恵子さんのお言葉には逆らえないでしょう」。そこで念のためご本人に確認してもらったら、「理恵子さんのおっしゃるようにするそうです」とのお答え。
これで鈴木理恵子、福田進一の共演が決まりました。やはり「美人の鶴の一声」に勝てる人間はいないようです。それにしても福田さんは、よほど開演15分前にご縁があるようです。
プログラムも、急遽決まったとは思えない素晴らしいもので、超絶技巧のパガニーニやバルトーク、そして楽しいタンゴのピアソラまで入っています。
皆様も是非ご存分にこのプログラムを楽しんでいただきたいと思います。
http://sencla.com/performer/suzukieriko.html
平井洋 せんくら2008プロデューサー
10/11(土) 12:45-13:30
仙台市青年文化センターコンサートホール
にご登場いただけるのが、ヴァイオリンの鈴木理恵子さん。せんくらには初めてのお目見えです。
桐朋学園時代から嘱望された存在で、卒業後すぐに23歳でまずは新日本フィルハーモニーの副コンサートマスターとして招かれ、その後、スウェーデンのマルメ歌劇場(北欧の名門です)のオーケストラや読売日本交響楽団にもゲストコンサートマスターとして招かれています。
ソリストとしては、チェコフィルをバックに「四季」のCDを入れたり、リサイタルでもお相手のピアニストは藤井一興さんとか高橋悠治さんとか野平一郎さんといったそうそうたる作曲家兼ピアニスト達が並んでいます。
このようにクラシックの略歴だけとっても、これでもか、という位なのですが、理恵子さんの場合、更に加古隆さんや久石譲さん(「となりのトトロ」や「崖の上のポニョ」の作曲者)といったジャンルを超えた独特な活動をなさっている方々からの信頼も厚く、彼らの主なコンサートにはよく招かれています。確か理恵子さんの最新CDは久石さんのプロデュースだと思います。
更に更に、クラシック系の演奏家としては珍しくアジアとの交流にも熱心で、アジア各地に出かけていってコンサートを開いたり、横浜の美術館ではアジア系の音楽祭の音楽監督をやったりしています。
そんな理恵子さんですから、せんくらにも「いつか是非」と思っていましたが、今回こういうことで急遽実現しました。本当は他にスケジュールもおありだったようですが、「はい、そういうことなら喜んで」とあっさりお引き受けくださいました。
その彼女が今回の仙台にいるメンバーを見渡して相棒として指名したのが、なんとギターの福田進一さん。
ギターとヴァイオリンの組み合わせはよくあるので、そのこと自体は驚くに値しませんが、今回の福田進一さんは15分前まで他のホールでソロリサイタルを弾いているのです。普通はこれは考えられません。何と言っても開場してお客様が入ってこられるときに福田さんはまだアルベニスか何かを他の本番で弾いている最中なのですから。
それで、「それは無理です」と申し上げたのですが、理恵子様のお答えは実に簡単で「福田さんなら大丈夫です」。
それで、ともかく電話を切り、福田さんのマネジャー氏におかけしました。
福田さんと言えば、第1回のせんくらの時は前日海外から成田空港に帰国してそのまま仙台入りのはずが、台風のため飛行機は成田に着陸できず、深夜関西国際空港に着陸してしまいました。もう東海道新幹線も無い時間です。更に寝台特急は満席。
それで福田さんはマネジャー氏に「せんくらは飛ぶね」と電話したところ、「そんなことをしたら飛ぶのはせんくらではなく、僕のクビです」というせんくらの歴史に残る名文句で福田さんはやむなく席もない寝台特急に飛び乗り、そこから更に満席の新幹線を乗り継いで本番15分前にホールに現れた、ということがありました。
これは、あまりに面白い話なのであちこちで書いたりしゃべったりしているので、もうご覧いただいた方もいらっしゃるかもしれません。
ともかく、そのマネジャー氏に電話をして、「15分前までソロ弾いてるんだから、福田さん駄目ですよねー」と言ったところ、「いや、理恵子さんのお言葉には逆らえないでしょう」。そこで念のためご本人に確認してもらったら、「理恵子さんのおっしゃるようにするそうです」とのお答え。
これで鈴木理恵子、福田進一の共演が決まりました。やはり「美人の鶴の一声」に勝てる人間はいないようです。それにしても福田さんは、よほど開演15分前にご縁があるようです。
プログラムも、急遽決まったとは思えない素晴らしいもので、超絶技巧のパガニーニやバルトーク、そして楽しいタンゴのピアソラまで入っています。
皆様も是非ご存分にこのプログラムを楽しんでいただきたいと思います。
http://sencla.com/performer/suzukieriko.html
平井洋 せんくら2008プロデューサー






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