雄倉恵子(2)2008/08/11 09:07

さて、今年弾かせていただく羽目になった曲目で何がそんなに大変か。
予防線もかねてちょっと愚痴らせていただきます。

まずフェスティヴァル冒頭の第1枠目のそのまた頭がバッハ。

インヴェンション ハ長調
平均律第1巻 ハ長調
ゴールドベルク変奏曲より アリア、第1変奏、第30変奏、アリア 

最初のインヴェンションと平均律はピアノをお弾きになる方は必ずやらされる曲で、熟知された方がたくさんいらっしゃるでしょう。こういう曲は本当に緊張です。少しでも目先を変えて監視の目(耳)を緩めていただくために、インヴェンションはバッハ自身が作っている3連音符のほうのバージョンでやります。

なんかちょっと変?と思っていただいている間に、あっという間に終わってしまう、という戦略です。

ゴールドベルクは鍵盤楽器奏者にとっては、ある種究極のような作品。
その最初と最後のアリア、30ある変奏曲の最初と最後をシンメトリックに、というのはいいアイディアだと思いますが、ここは「ポピュラーな小品をやる<せんくら>」ではありませんでしたっけ?

ともかく、どうせなら、バッハ晩年の究極的な大作を聴きとおした場合の感動の半分くらいをお届けできないか、と工夫しながら準備しているところです。

ゲオルク・フリードリヒ・シェンク(2)2008/08/11 09:08

昨日のOverture(序曲)に続き、今日からは御喜美江氏のインタビューによる質問形式で皆さまにお送りいたします。
まずはOp.1をどうぞ。(質問、訳:御喜美江)
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1.) Gibt es in Ihrer frühen Kindheit ein starkes, unvergessliches Erlebnis mit Musik? Wenn ja, könnten Sie dies bitte kurz beschreiben ?
あなたの幼年時代に音楽との出合いで、忘れ難いほど強烈な体験、または想い出がありますか?もしあったらおしえてください。


答え:An drei Erlebnisse denke ich heute noch oft:

今でもよく思う3つの体験があります。

Ich muß etwa zweieinhalb Jahre gewesen sein –
Wir hatten in unserem Haus in Aachen ein „Musikzimmer“
mit einem großen Schrank. Wenn man die Schranktür öffnete,
hing dort ein ISOPHON-Lautsprecher, und ich erinnere mich
an das erste Mal, als ich Musik aus diesem Lautsprecher hörte.
Mein Vater und meine Brüder standen um mich herum,
und mein Vater sagte „Hör mal, das ist HÄNDEL!“
Es war ein Concerto grosso von Georg Friedrich Händel,
gespielt in einer großen Orchesterbesetzung –
dieses bildhafte Gefühl von „weihevoller“ Raumfüllender Musik
kann ich heute noch zurückrufen, wenn ich Aufnahmen von
Wilhelm Furtwängler höre.

自分は確か2歳半くらいだったと思います。
アーヘンの実家には「音楽室」という部屋があり、そこには大きなタンスがありました。そのタンスの扉を開けると、そこにはISOPHON-スピーカーがぶらさがっており、そこで音楽を聴いた最初の記憶があります。父と兄達が自分のまわりにいて、父が「聴いてごらん、これはヘンデルだよ!」と言いました。それは大きな管弦楽団編成によるゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルのコンチェルト・グロッソでした。その空間を満たす“厳粛なる”音楽がもたらした描写的な感情を、今でもヴィルヘルム・フルトヴェングラーを聴くと思い出します。


Die folgende Erinnerung könnte in dieser Zeit ihren Ursprung haben:
Ich war ein „Kopfwackelkind“, das heißt ich konnte nicht einschlafen
ohne in meinem Bettchen mit dem Kopf hin und herzuschaukeln.
Ich stellte mir dabei einen unendlich großen Raum vor, den ich mit
Musik füllte… Nach einiger Zeit wurde mir vom Kopfwackeln natürlich
schlecht – dann habe ich mit beiden Armen die Musik weggewischt
und gesagt: “noch einmal neu !“. Und es fing noch einmal an.

次の思い出も、多分同じ時期でありましょう:
私はいわゆる“頭揺らし子供”で、ベッドに入ってから頭を右へ左と揺らしていないと寝入ることができませんでした。そして頭を揺らしながら、無限に大きな空間が音楽で満たされていくことを想像し、しかしその振動で次第に気持ちが悪くなると両手を空間に伸ばして音楽をいったん消し、「もう一度あたまから!」と言って再び揺らし始めるのでした。

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頭を揺らしながら無限なる空間に音楽を感じた男の子の3つ目の体験とはなんだったのでしょうか?明日をお楽しみに。

マネージャー 竹島愛弓